ジモティー(7082)が、新規事業として進めているジモティースポット。地域の「譲り合いコミュニティ」という名目の中古品引取・販売施設。
行政と連携することで、地域の住民に告知してもらえる。ジモティーからすれば、広告宣伝コストがかからない。
地域の住民は、粗大ごみに出すと有料のところを無料で引き取ってもらえるし、まだ使える物品を捨てる罪悪感を持たずに済む。ジモティーからすれば、無料で中古品を仕入れられる。
見事なビジネスモデルだと思うが、実は薄氷を踏むような事業だと思われる。
まず第一に、撤退が容易ではない。地方自治体と協定を結んでゴミ削減に取り組むわけで、「儲からないから今月で終わりにします」と一方的に撤退できるようなものではない。(協定の契約書を見たわけではないが一般論として)
あらゆる店舗チェーンのビジネスに言えることだが、激しいスクラップ&ビルドによって利益を出していく。不採算店を次々と閉鎖しなければ、そのチェーンは利益が出ない。
撤退できないジモティースポットは、かなり慎重に出店を進める必要がありそう。24年12月末でようやく10店態勢になる計画だったが、新規出店のIRから察するに達成できていないのではないか。ラーメンチェーンのように強気に出店し続けるような真似はできない。
ジモティースポットが100店200店態勢になるまでにどれほどの時間がかかるのか不明だ。行政との連携は24年12月時点で200自治体に達している。それなのに出店が遅々として進まないのは撤退障壁が高いからではないか。
第二に、リユースショップとの競合関係がある。リユース買取店として、ハードオフ、トレジャーファクトリー、セカンドストリートなど多数の有名チェーンが全国に展開している。
「不要になったけれどもまだ使えるモノ」をそこに持っていけば、多少の金になるかもしれない。そういった買取店に行かずに、ジモティースポットに持っていく動機は何か。
おそらく、「こんなものは買い取ってもらえるはずがない」という思い込みだ。しかし、ジモティースポットでも汚れていると無料でも引き取ってもらえない。
ジモティースポットのグーグル口コミを読むと、「せっかく持っていったのに、汚れていると言われて引き取ってもらえなかった」と憤慨している口コミが散見される。要するに、手間暇が無駄になったと怒っている。
ジモティースポットからすれば、買い手がいないものを引き取ってしまったら、不良在庫となり産業廃棄物のコストがかかる。そのため、買い取りコストがないとしても、売れる見込みがあるものしか引き取りたくないのが本音だ。
しかし、地域住民からすれば、中古品なんだから汚れていたり、もしかしたら機能の一部が壊れているかもしれないのは当然だ。買い取りのように売るわけではなく、無料で譲るわけだから、スポットに持っていけば引き取ってもらえるつもりになる。
わざわざ持ち込んで引き取ってもらえない場所だというなら、手間暇が無駄になるから持っていかずに粗大ごみで捨ててしまうようになる。あるいは、引き取ってもらえる保証がないなら、上記リユース買取店のように「買い取ってもらえる保証がない」のと一緒だ。中古品がまだ綺麗な状態なら、リユース買取店に持っていく動機が生まれる。
将来的に、ジモティースポットの仕入れが順調に進むのか、見通すのは難しい。「ゴミを減らして持続的な地域社会」などと綺麗事にうったえることで、中古品を持ってきてもらうしかない。
第三に利幅が薄いこと。あらゆる店舗商売にいえることだが、利幅の薄い商品と利幅の厚い商品がある。
通常のリユース買取店でも、数百円の商品は客寄せのためにあるだけで、数千円から数万円の商品で利益を出している。
しかし、ジモティースポットは数百円の商品ばかりになる傾向がある。これは当然で、数千円・数万円で売れるような中古品であれば、持ち主はリユース買取店に持っていったり、メルカリで売ったりすることだろう。
いくら無料で引き取るから仕入れコストがないとは言っても、ショップの人件費や賃料がかかるわけだから、こんな薄利の商売で持続性があるのかどうか。
・・・以上、3つの懸念事項を書いたが、ジモティーの経営陣は百も承知だろうから、どうやって乗り越えていくのかウォッチしたい。
投資家の立場からすれば、安易な投資はリスクが大きい。店舗拡大のペースが遅くて、何年たっても業績が成長しないリスクがあり、株価が低位のまま動かないかもしれない。
将来的に事業も株価も花開くかもしれないが、現段階では安易に投資できる段階ではない。
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